注文住宅の見積書にある「諸経費」の中身を確かめる
【PR】記事内に広告リンクがあります見積書を2社分並べると、どちらにも「諸経費」という行があります。金額は違います。 どちらが高いのかを確かめようとして中身を見ると、そこに何が入っているのかが書かれていません。
先に結論から書きます。
「諸経費」は、実物では工事の合計の中に入っていました。 当サイトが読んだ範囲では、工事の項目が並んだ最後に内訳の無い1行として置かれる例、 工事の細目として管理費の名前で入る例、他の工事の金額に対する割合で立てる例がありました。 いずれも、工事費として合計される側にあります。
そのため、「工事費はいくら、諸経費はいくら」と分けて読むと合わないことがあります。 同じ費用が、片方の見積書では工事の細目、もう片方では最後の1行、という形で現れます。
できることは、内訳を頼むことです。 建設業法第20条第4項は、注文者(=あなた、つまり工事を頼む側)から請求があったときの交付を義務としています。 頼むときの言い方は記事の後半にあります。
本記事は一般的な情報の整理であり、金額の目安を示すものではありません。 「諸経費」という語の中身を定めた公的な決まりは、当サイトで確認できた範囲では見当たりませんでした。
この記事で分かること
- 公共の基準では3つの枠(注文住宅の定めではありません)
- 金額の目安や割合は書いていません
区分の線がどこにあるかを先に押さえたいときは。 本体工事費と付帯工事費の違い
実物の見積書で、「諸経費」がどこにあるか
読み取ったのは2種類の資料です。ひとつは家を建てた方がご自身で公開している実物の見積書9件、 もうひとつは積算ソフトの見積サンプル1件(実在の施主の案件ではなく、ソフト会社が公開している見本)です。
この中から、書かれ方の違いが分かる3つを挙げます。 「3通りしかない」という意味ではありません。他の資料では、この語が見当たらないものもありました。
工事の項目の最後に、内訳の無い1行として
積算ソフトの見積サンプルでは、24 諸経費 1式 2,056,129円 の1行だけで、内訳の記載がありませんでした。
この行があるのは、帳票名が 工事内訳書 の紙です。
1 仮設工事 から始まる24行の24番目がこの行で、その次の行が 合計 です。
つまりこの1行は、工事の合計に含まれています。 金額は分かりますが、何に使われるかは見積書から読み取れません。
工事の中に、管理費として入る例
アイ工務店の資金計画書では、管理諸経費 と 安全管理費 が本体付帯工事の中にありました。
こちらは工事の細目として、名前を持った複数の行になっています。 先の例と並べると、どちらも工事の側で集計されているのに、片方は内訳の無い1行、片方は名前の付いた細目です。
別の金額に対する割合で立てる例
県民共済住宅の見積書には 諸経費 水道工事変更金額の10% という行がありました。
数量と単価を掛けて出す形ではなく、他の工事の金額から計算される行です。 元になる工事の金額が動けば、この行も動きます。
「諸経費」と書かれた行を1つ見つけて、2社の金額を並べる、という読み方が成立しません。
3つとも工事の側で集計されていますが、1行なのか細目なのか、率なのかが違います。 片方の「諸経費」に入っているものが、もう片方では別の名前の行になっていることがあります。
自分の見積書の、どこを見るか
工事ではない行が、同じ紙に並んでいる
見積書には、工事の行のほかに工事ではない行が並んでいることがあります。
実物の見積書で確認できた、工事ではない行の例です。
設計料/実施設計料/インテリア設計料建築確認申請料/確認申請手数料印紙代/建物契約時印紙代/ローン契約用印紙代登記預り金/建物登記費用/抵当権設定登記費用火災保険費用/火災保険(10年間)ローン諸費用等(手数料)/融資手数料
見るのは、自分の見積書の「諸経費」がどちらの並びにあるかです。 上のような行と同じ並びにあるのか、それとも工事の行の中にあるのか。 ここが分かると、その金額が工事費として集計されているかどうかが決まります。
工事の行の中に入っていることがある
アイ工務店の資金計画書では、管理諸経費 と 安全管理費 が本体付帯工事(建物本体とその周りの工事)の中にありました。
「工事ではない費用は工事費と別」という前提は、実物では成り立たないことがあります。
区分の線がどこにあるかは本体工事費と付帯工事費の違いで扱っています。
そもそも紙の名前が「見積書」とは限らない
三井ホームの資金計画チェックリストは、土地代・保険・ローンまで同じ紙に載っていました。
実物9件で確認できた紙の名前には
建物本体工事御見積書・請負代金内訳書・マイホーム資金計画書・資金計画書 がありました。
どこまでが工事の話で、どこからが支払いの話かは、紙ごとに線の位置が違います。
題名で見分けられないときに何を見るかは資金計画書と見積書の違いにまとめました。
参考|公共の工事では、3つの枠に分けて定められている
ここで挙げるのは公共の建築工事で使う基準で、注文住宅の見積書に適用される定めではありません。
読み飛ばしても、この記事の使い方は変わりません。「1行の中に何がありうるか」を知りたい方だけ読んでください。
国土交通省の公共建築工事共通費積算基準では、工事そのもの以外の費用が 共通仮設費・現場管理費・一般管理費等という3つの枠に分けて定められ、それぞれに内訳があります。
この基準の中では、敷地の測量も印紙代も、工事の行ではなくこの3つの枠のどれかに位置づけられています。
つまり、測量代や印紙代のような費用が、「工事以外」としてまとめられることがある、ということです。 1行だけの「諸経費」を見たときに、その1行が何をまとめたものかを尋ねる手がかりになります。
同基準は、これらを「一式として計上する」としています(公共建築工事共通費積算基準・国土交通省)。
1行にまとまっているとき、何が読み取れないか
同じ費用が、どちら側にあるかが見えない
実物の見積書では「仮設工事」が1項目にまとまっている例がありますが、公共の書式では工事の科目としての「直接仮設」と、工事以外にまとめられる「共通仮設費」に分かれています。
実物の見積書で、仮設が「諸経費」の側にまとめられている例は確認していません。 ただし公共の書式のように分かれうる以上、2つの見積書が同じ費用を違う行で表している可能性は残ります。 これは会社の姿勢の違いではなく、区切り方の違いです。
仮設の呼び方自体も社ごとに違います。実物9件では
仮設工事・共通仮設工事費・共通仮設工事+仮囲い工事・仮設費用が並んでいました。
呼び方が分かれる理由は会社によって書き方が違う理由にあります。
1行の中に、複数のものが束ねられていることがある
積算ソフトの見積サンプルには 地盤調査(敷地測量費を含む) という行がありました。
公共の基準では、敷地の測量は共通仮設費の「準備費」に当たります。
1行の中で複数のものが束ねられていると、行の数を数えても中身は分かりません。 見るのは行の数ではなく、同じものが同じ側に入っているかです。
だから、先に内訳をそろえる
金額を並べる前に、両社の「諸経費」に何が入っているかを聞くほうが順番として先になります。
聞き方は次の見出しにまとめました。
内訳を頼むときにできること
請求があれば、交付は義務
建設業法第20条は、内訳を書いた見積書を作ることを努力義務としています(第1項)。
ただし注文者から請求があったときは、その見積書の交付が義務になります(第4項)。
「作るのは努力義務なら、内訳の無い紙を渡されて終わりではないか」と思うかもしれません。 第4項が交付を義務としているのは内訳を書いた見積書のほうで、 総額だけの書面はこれにあたりません。 つまり、こちらが請求するまでは努力義務の範囲で、請求したかどうかで扱いが変わります。
期限があります。第4項が定めているのは請負契約が成立するまでの間で、 契約が成立したあとについて、同項は交付の義務を定めていません。契約の前に請求してください。
義務を負うのは、建設業法上の「建設業者」(許可を受けた事業者)です。 また条文は「諸経費という行をどこまで細かく割るか」までは定めていません。 第1項と第4項の全文は見積書がもらえないときにできることにあります。
第1項が求めているのは材料費などの内訳と、工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数で、条文はこれを書いた見積書を「材料費等記載見積書」と呼んでいます(令和7年12月12日施行の条文)。
頼むときの言い方
「諸経費」の中身をまとめて尋ねるより、どこに何が入っているかを個別に尋ねるほうが、答えが返ってきやすくなります。
- 「諸経費に含まれている項目を、分けて書いていただけますか」
- 「仮設工事は、工事費と諸経費のどちらに入っていますか」
- 「地盤調査や測量は、どの行に入っていますか」
金額の交渉ではなく、書類の読み方の確認です。 見積書を他社に渡さずに範囲だけをそろえる方法は見積書を他社に見せるときの確認にあります。
内訳が返ってきたら、まずどこを見るか
片方にあって、もう片方に無い項目を探します。ここが、金額の差が生まれている場所です。
片方だけにある項目が見つかったとき、原因は2つのどちらかです。
- 書き方の差:もう片方も同じ工事をするが、別の名前の行に入っているか、他の行にまとめられている
- 範囲の差:もう片方はその工事を見積に入れていない(後から追加になりうる)
この2つは、そのまま質問にできます。 「御社の見積には◯◯という行がありませんが、別の行に含まれていますか、それとも今回は入っていませんか」。 入っていない場合は、後から金額が動きうる箇所です(後から上がる箇所の見分け方)。
項目名の書き方も社ごとに違うため、この照合は1行ずつの手作業になります。 当サイトの見積そろえは、2社分を入力すると表記の違いを吸収したうえで「片方の見積にはあるが、もう片方には無い項目」を並べて表示します。
2社分の内訳がそろったら、ここで並べる(無料・登録不要)よくある質問
諸経費は総額の何パーセントが普通ですか。
当サイトは、割合の目安を書いていません。 注文住宅の諸経費の割合について、出どころをたどれる資料を確認できなかったためです。 手元の見積書について知りたい場合は、その会社に内訳を尋ねるのが確実です。 建設業法第20条第4項は、注文者から請求があったときの見積書の交付を義務としています。
諸経費が1行だけで内訳が無い見積書は、書き方として問題があるのですか。
問題があるとは言えません。まとめて計上すること自体が正規の記法です。 公共建築工事共通費積算基準も、共通仮設費・現場管理費・一般管理費等について「一式として計上する」と定めています。 ただしこの基準は公共の建築工事に使うもので、民間の注文住宅の見積書に適用される定めではありません。 内訳が必要な場合は、契約が成立するまでの間、注文者から請求できます(作成そのものは努力義務です)。 「一式」という表記そのものについては「一式」「1式」の違いと「概算」の意味で扱っています。
「諸経費」と「諸費用」はどう使い分けられていますか。
この2語を区別して定義した公的な文書は確認できていません。 当サイトの見積そろえは「諸経費」を「諸費用」の枠に入れて扱っていますが、 実物の見積書では工事の内側に置かれている例もあり、枠の線は会社ごとに動きます。 見積書ごとに、その行がどちら側で集計されているかを確かめる必要があります。
2社で諸経費の金額が大きく違うとき、どちらが安いと言えますか。
金額だけでは言えません。中に入っているものがそろっていないためです。 まず両社に同じ粒度の内訳を頼み、同じ項目が同じ側に入っているかを確かめてから比べます。
この記事の調べ方
- 実物の見積書9件(家を建てた方がご自身で公開しているもの)を読み取りました
- 積算ソフトの見積サンプル1件も併せて読み取りました。これは実在の施主の案件ではなく、ソフト会社が公開している見本です。本文では「積算ソフトの見積サンプル」と書き分けています
- 建設業法の条文は e-Gov 法令検索で確認しました(昭和24年法律第100号)
- 公共建築工事共通費積算基準は国土交通省の公開PDFで確認しました
- 「直接仮設」という科目名は公共建築工事内訳書標準書式(国土交通省)で確認しました。共通費積算基準のほうには、この語も「諸経費」の語もありません
- 会社名は、その会社の書き方の例として挙げています。優劣を示すものではありません
- 金額の目安や割合は書いていません。注文住宅の諸経費の割合について、出どころをたどれる資料を確認できなかったためです
まとめ|名前ではなく、中身をそろえてから比べる
「諸経費」は、内訳の無い1行のこともあれば、工事の細目のことも、割合で立つこともあります。
置き場所が違うので、行を1つ見つけて金額を並べても比べたことになりません。
行の名前をそろえる前に、その費用がどの行で集計されているかを確かめることになります。 仮設工事のように、公共の書式では工事の科目と工事以外に分かれている項目もあります。
内訳は、契約が成立するまでの間、注文者から請求できます(作成そのものは努力義務で、義務を負うのは許可を受けた建設業者です)。 「諸経費に含まれている項目を分けて書いてください」と頼むところから始まります。
諸経費の額が小さい見積書が、安いとは限りません。同じ費用が工事の側に入っているだけのことがあります。
間取りプランと資金計画を、まとめて無料で。
届くのは各社の提案で、契約前の正式な見積書とは別のものです。比べるためのものなので、会社は複数選びます。
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